++てんびん座の神話++
この星座は正義の女神アストライアがもつ、善悪をさばくための天秤だったとも言われています。世界がゼウスの父クロノスによって治められていた頃
世界のすべての生き物は老いることがなく、あらゆる恵みは地上にあふれ、いかなる労苦も煩いも知らず幸せに暮らすことがでました。
ところが草木の枯れる冬が生まれ銀の時代へと入ると、人々は食物を得るために働かねばならなくなりました。
やがて人々の間に争いが生まれはじめ、それまで神々は地上の人間とともに暮らしていました。
しかし、争いが広まるにつれ、神々は天上界へと去って行ってしまいました。
でも、人々は決して殺人だけは行わなかったため、正義の女神アストライアとその妹、慈悲の女神アイドスだけは、地上に残って人々に正義を説き続けたのです。
アストライは手に天秤を持っており、争いが起こると、その当事者らを天秤に乗せて正邪を量りました。
正しい人を乗せた皿は持ち上がり、邪なる人を乗せた皿は下がったと言います。
この天秤でもってアストライアの裁判はきわめて公正に行われたのです。
しかし銀の時代が終わり、青銅の時代になると人々はいっそう野蛮になり、親兄弟でさえも殺し合いをはじめるようになってしまいました。
青銅の時代の人々はお互いを殺し合って自ら滅びて行きました。
続く英雄の時代は神々を敬う英雄達が現れ、以前よりいくらかましな時代となりました。
しかしその後、鉄の時代に入ると人々は完全に脱落し、集団で武器を取って戦争をするようになってしまったのです。
ここに至ってついにアストライアも人間を見限り、天上界へ去って行ってしまったのです。
こうしてアストライアは乙女座となり、アストライアの持っていた正邪を量る天秤が天秤座になったのだと言われています。